(東京新聞2010年2月25日より)
東京都足立区で2004年,女性=当時(24)=が監禁,殺害されたのは警視庁が捜査を怠ったためだとして,両親が都に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で,東京高裁(柳田幸三裁判長)は24日,「捜査権限を適切に行使していれば殺人を防ぐことができた」と捜査怠慢と死亡との因果関係を認めた。 一方,女性の落ち度も認め,請求通り2000万円の支払いを命じた一審・東京地裁判決を変更,賠償額を1000万円とした。
判決などによると,小出さんは2003年12月,知人の男女(服役中)に呼び出されてアパートに監禁され,暴行などを受けた結果,翌年1月に死亡した。
柳田裁判長は,母親などから捜査を依頼された多摩中央署について,「被害者に危険が迫っていることを認識し,救出することは可能だったが,事件性が認められないとして捜査しなかったのは著しく不合理」とした。 一方で,女性は,自分の意思でアパートから立ち去ることができる期間もあったと判断し,過失を認めた。
やるべきことをしなかった,いわゆる「不作為」の過失を認めた事案です。
一般に,「不作為」の過失を証明することは難しく,裁判ではシビアな闘争をしなければなりません。
この事案のように,相手が公権力の場合は,特に,大変です。
ご遺族にとって,勝たなければならない裁判,しかも,壁は決して低くない中で,闘い続けなければならない。 さぞやご苦労されただろうと思います。
代理人弁護士も,恐らくは同様のご苦労だったと思います。
犯罪被害において,被害者の過失を認めたことについては,酷なような印象もあります。
とは言え,高等裁判所が,警察の「不作為」について,過失と断じたことの意義は大きいです。
事案からして,都の方で上告してくるかもしれません。 推移を見守りたいと思います。