不在者財産管理人着服:国に1900万円賠償命令 東京地裁判決「家裁が監督怠る」

投稿者: | 2010年2月25日

(毎日新聞2010年02月25日より)
 不在者財産管理人の次男(42)に金を横領されたのは,東京家裁八王子支部が監督を怠ったためとして,東大阪市の男性(72)が,国に約6100万円の賠償を求めた訴訟の判決で,東京地裁は24日,約1900万円の支払いを命じた。松並重雄裁判長は「家裁支部職員が次男の管理状況の調査を怠ったのは違法」と述べた。
 判決によると,男性は72年に妻と離婚し,次男と三男は母方の父母が引き取った。三男が95年に交通事故死したため,男性に保険金など約7000万円が入ったが,男性の行方が分からなかったため,家裁支部は97年,次男を不在者財産管理人に選んだ。
 家裁支部は10年後の07年,男性の居所を把握して財産の管理状況を通知したが,次男が02~03年に約1600万円を着服していたことが判明した。判決は「01年以降,次男が管理報告書の提出要請に応じなくなったのに,監督義務のある家裁支部が2年以上も放置したため損害が生じた」と認め,弁護士費用などと合わせ支払いを命じた。【伊藤一郎】

 不在者財産管理人の制度は,相続に携わる弁護士なら,1度は関わったことがあるはずです。
 相続の事務は形式的かつ厳格で,必ず,法定相続人の全員のハンコがいります。 ハンコがもらえない時には,調停なり裁判なりをして,ハンコに代わる裁判所のお墨付を取得する必要があります。
 でも,行方不明者がいた場合は,対応に困ります。
 そんなときに利用されるのが,不在者財産管理人の制度です。 一般にはあまり知られていませんが,非常に利用価値のある制度です。

 不在者財産管理人は,家庭裁判所の監督に服することになっています。
 しかし,弁護士が不在者財産管理人になっている場合ならともかく,一般市民が不在者財産管理人であるときには,家庭裁判所に有効な監督を期待するのは難しいのが実態でしょう。

 今後,この判決を受けて,実務がどのように動いていくのか。 類似の制度,たとえば成年後見人の実務にも,影響が現われるはずです。
 当面,注意して見ていこうと思います。