(読売新聞2010年3月18日より)
北海道苫小牧市のアパートで2006年12月,自主回収中の石油ファンヒーターの不完全燃焼による一酸化炭素中毒で7人が死亡した事故を巡り,遺族が製造元の「トヨトミ」(本社・名古屋市)に計約8000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が18日,札幌地裁であった。
竹田光広裁判官は「原告の請求に理由がない」として,請求を棄却した。訴えていたのは,事故で娘(当時5歳)を失った母親ら遺族2人。判決などによると,このファンヒーターは1982~83年に製造された「LCR-3」型。86年2月までに不完全燃焼事故で計7人が死亡,同社は同年に自主回収を開始したが,苫小牧市の事故当時は約1800台が未回収だった。同社は現在も自主回収を続け,18日現在で1677台が未回収(回収率約92%)となっている。
原告側は裁判で,「被害拡大を防ぐための周知義務や回収・交換義務を怠った」と主張していたが,判決は「事故時点の回収交換率は極めて高く,周知回収活動が不十分とは言い難い」などとして,製造元の責任を認めなかった。この事故を巡っては,遺族側が「国が回収を命じていれば事故を防げた」として,国に約8000万円の賠償を求める訴訟も同地裁に起こしている。
量産品・普及品に不具合が含まれていた場合,メーカーの責任はどこまで及ぶのか。
その,限界事例です。
この事例では,1983年まで製造されていた製品についての,2006年の事故です。
製造中止から23年,メーカーが自主回収を開始してから20年を経過しています。
使用者側としても,20年前の製品を使う上で,定期点検等を行っていれば,回収情報に接する機会があったはずです。
裁判所は,さすがに,メーカーには責任がないと判断しました。
恐らくは控訴されるでしょうから,控訴審の判断にも注目したいところです(和解決着となる可能性もありますが)。