ハトのフン害,216万円払え 女性の餌やり差し止め…大阪地裁

投稿者: | 2010年3月13日

(読売新聞2010年3月13日より)
 近隣の女性住民が毎日,自宅前でハトの餌やりを続けたため,大量のふんで自宅を汚されたとして,大阪府守口市の女性(68)が餌やりの差し止めと345万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日,大阪地裁であった。浅井隆彦裁判官は「女性が餌を与えないよう再三求めたのに,執拗に給餌行為を繰り返した」として,住民に対し,女性宅の周囲30メートル以内で餌やりをしないことと,慰謝料など216万円の支払いを命じた。

 判決によると,女性住民は2001年頃から自宅前で,ハトに餌を与え始めた。このため,幅4メートルの道を挟んで向かいにある女性宅にもハトがとまるようになり,大量のふんのアルカリ反応で,ベランダの屋根や雨どいが劣化。洗濯物も干せない状態になった。
 浅井裁判官は,餌やりについて「女性が自宅を3階建てにしたため,日照・電波阻害が生じたとする住民の仕返しだった」と認定。「女性が不衛生で病気の原因になると告げたのに,住民は一顧だにしなかった」として,弁護士費用を除き,女性の精神的苦痛に対する慰謝料を50万円,ベランダなどの修理費用を約146万円と算定した。
 一方,女性は200メートル以内での餌やりをやめるよう求めていたが,浅井裁判官は「ハト被害を防ぐには30メートルで十分」と述べた。

 こうした餌やりを巡る近隣トラブルが,訴訟に発展するケースはほかにも起きている。
 2008年には,東京都三鷹市の集合住宅の住民などが,自室の玄関前などで野良猫に餌を与えていた将棋の加藤一二三・九段を相手取り,餌やりの差し止めなどを求めて東京地裁八王子支部に提訴し,現在も係争中。
 2004年には「ベランダでハトに餌付けしている」との苦情を受け,京都府が府営住宅の女性住民に部屋の明け渡しを求めて京都地裁に提訴,府が勝訴した。
 近所の夫婦らが野良猫に餌を与えたため,ふん尿に悩まされたとして,神戸市内の住民が夫婦らに損害賠償を求めた訴訟では,神戸地裁が03年,猫被害の慰謝料40万円を含む150万円の支払いを命じた。
 ただ大阪地裁のケースのように,動物への餌やりが近隣への「仕返し」と認定されるのは異例だ。

 近隣紛争では「受忍限度」が問題となります。
 裁判所も,動物への餌やり行為を一切禁止すべきとは言いません。 要は,程度の問題です。

 注目したいのは,原告は200メートル以内の餌やり中止を請求していたのに対し,裁判所は「ハト被害を防ぐには30メートルで十分」と認定したこと。
 裁判では,人の行動に制限を加える判決を下すことができます。違反した場合にはペナルティー金を支払う義務を課すこともできます(法律用語で間接強制と言います)。
 ただ,裁判所は,一般に,人の行動に制限を加えることには,極めて慎重です。 自由の砦である裁判所が,人の自由を制限することは,たとえ対象が不法行為であったとしても,謙抑的に,必要最小限に為されるべきだという価値判断です。

 ※追記:加藤一二三さんの事件で,5月13日,餌やり中止と損害賠償を認める判決が出ました。