(西日本新聞2010年02月23日より)
1市2町が1月に合併して誕生した糸島市の白糸地獄の山林に建設残土を搬入し埋め立てる林地開発計画で,同市の松本嶺男市長は22日,開発予定地に通じる林道について開発業者が申請していた使用許可について,市の林道管理条例に基づき不許可とする通知を行ったと発表した。同市が計画にストップをかけた形だ。
県知事が森林法に基づいて照会していた市長の意見についても同日,「住民が災害発生や水質汚濁を危惧(きぐ)している」という内容の回答をした。
県はこの回答と,麻生渡知事が昨年6月の県議会で,旧前原市長,旧二丈町長が林道使用許可を出さない場合,「(県として)開発許可を出すのは困難」との見解を示していたことから,22日,同計画の開発を許可しない方針を決めた。
同市は,林道使用の不許可の理由として,(1)10トン車が1日50台,8年間にわたって残土を搬入すると,(周辺の)林業に支障が出る,(2)林道を損傷させる恐れが高い,(3)白糸の滝などへの観光客の交通に危険をもたらす恐れが高い‐などとし,「残土運搬は条例の禁止行為に当たる」としている。
開発計画は,約8ヘクタールの事業区域のうち約5ヘクタールに約44万立方メートルの残土を搬入する方針で,4キロの林道を利用する予定。
計画をめぐっては地元住民が旧前原市や旧二丈町,県に約1万4千人分の反対署名を提出,旧市議会と旧町議会も反対決議をし,糸島市にも地元41区長が連名で反対の陳情書を提出していた。
松本市長は「重大な判断をした。訴訟になる可能性もある。判断が確定するまで市議会や市民の支援をいただきたい」と述べた。地元の長糸校区区長会の東司幸保会長は「開発により井戸水や農業用水が汚染する恐れがある。市を支えていく」と話した。
開発業者は「ルールに基づき手続きを進めてきた。今後の対応は弁護士と相談して決めたい」としている。
産業廃棄物処分場に比べ,残土捨場は,設置が容易です。
残土捨場の設置は,形式上は,「土地を埋立てて開発する」(ための土砂搬入)という体裁が取られます。 国土法や森林法等の開発許可の対象となることはありますが,厳しく規制される産廃と異なり,許可が出やすいです。
大抵の場合,利益を出す仕組みは共通しています。
(1) 穴を掘って,土(真土)を建築資材として売却する。
(2) 掘った穴に,残土(建築廃材)を受入れ,料金を徴収する。
(3) 掘った穴を残土で埋め,造成して,造成地を売却・利用する。
このうち,確実に利益が出るのは,(1)と(2)です。
(3)は,大抵は,山あいの土地ですから,造成地の売却・利用は,実際上,難しいです。むしろ,きちんとした造成をするほどにコストアップとなり,利益を減らしますから,手抜きが起こりやすいのです。
これに対して,地元住民としては,(1)大型トラックが長期にわたって地元の道を行き来すること,(2)残土として有害物質を含んだものが廃棄されるおそれ,(3)不十分な造成で崖崩れ等の災害が起きるリスク,といったことに,頭を悩まされることになってしまいます。
このような構造から,必然的に,トラブルが多いです。
上の記事によれば,糸島市は,搬入車の林道使用を許可しないという形で,残土捨場計画を水際で阻止しました。
個人的には,応援したい気持ちです。