【6/10】自賠責や被害者給付金も変更へ 顔の傷訴訟確定「男女平等…当然」

投稿者: | 2010年6月12日

(産経ニュース2010.6.10より)
 顔などに大きな傷跡が残った労災補償で,男性は女性より低い障害等級とする国の基準を違憲とした京都地裁判決に対して,厚生労働省が10日,障害等級の見直しを進めることを表明したことを受け,同等級をモデルにしているほかの省庁のさまざまな補償制度も変更される可能性が高まった。
 国土交通省が扱う自動車損害賠償保障法の後遺障害等級は,労災補償の障害等級をモデルにしている。国交省の担当者は「労災補償の障害等級が男女平等になれば,合わせるのは当然。厚労省の動きを見て変更を検討する」と話す。
 また,犯罪で亡くなった被害者の遺族や重大な障害を負った被害者らに対して,国が一時金を支給する法律「犯罪被害者等給付金支給法」を扱う警察庁も同じ姿勢だ。同法の等級も労災の障害等級が引き継がれており,担当者は「厚労省に合わせて変える」としている。

国は,控訴しないで制度を変える方針を取りました。
画期的な成果です。

従来,損害賠償請求の局面で,男女の性差が問題になることは,大きくは2つありました。
1つは,同等の後遺症でも,等級レベルが異なってくる問題。これは,男性が不利です。
もう1つは,逸失利益(後遺症関連の損害項目)の算定において基礎収入として平均賃金を参照する場合に,男性賃金平均と女性賃金平均とで差異があるという問題。これは,女性が不利です。

しかし,平均賃金の問題の方は,最近は,男性にも女性にも,男女平均賃金を適用する裁判例が多くなり,標準になりつつあります。
この問題は,そもそもが裁判所の裁量的判断事項であったため,裁判での取扱の変更に,さしたる障害はありませんでした。

他方,後遺症等級の問題は,なかなかハードルが高かったです。
そんな中,京都地裁は,国に対して,事実上,取扱の変更を命じる判決を下しました。 国が判決を受け入れるということは,取扱の変更を行うという意思表示に他なりません。
今後,実務は大きく変わってきます。

男女差を解消しようとする社会の動きがあり,それが司法判断に反映され,司法判断が行政を動かす。
とても理想的な流れだと思います。