(毎日新聞2010年5月20日より)
広島市中心部の国道2号とその上を通る高架バイパスの騒音や排ガスで健康や生活に被害を受けたなどとして,沿道の住民ら78人(商店含む)が国と広島市に国道の供用の一部差し止めやバイパス建設工事の差し止め,総額約1億7000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が20日,広島地裁であった。
橋本良成裁判長(植屋伸一裁判長代読)は「騒音被害は社会生活上受忍すべき限度を超えている」として,住民36人に計約2160万円の損害賠償を支払うよう命じた。 受忍限度については,国の環境基準よりも厳しく判断した。
差し止め請求はいずれも棄却。国土交通省によると,道路騒音被害への賠償を認めた判決は兵庫県での国道43号訴訟に続き2例目で,3大都市圏以外の道路公害で賠償を命じたのは初めて。
判決などによると,原告は住民39人,勤務者38人,商店1。通行量は1日6万~10万台で,沿道の騒音や排ガスが基準を超え,睡眠や会話,テレビ鑑賞,業務などに支障があり,健康被害にもつながると主張。国側は「沿道の住民や事業者に便益をもたらし,日常生活の維持存続に不可欠な道路」「国道設置後に転入した原告もいる」などと反論した。
判決は,騒音被害について,「住民の一部が国の環境基準(昼間70デシベル,夜間65デシベル)を超える騒音にさらされている」と指摘。その上で,「この道路の公共性・公益性の一定部分は沿道住民らの犠牲の上に実現され,不公平があり,住民の一部は受忍限度を超えた被害を受けている」と判断。 受忍限度は,文献などを基に「昼間の屋外で65デシベル以上の騒音で会話に支障が出る」「夜間の屋内で45デシベル以上で睡眠に影響が出る」とし,基準を超える原告について賠償を認めた。
勤務者については,「被害と道路からの利益を比較すると著しい不均衡はない」として賠償請求を棄却した。
また,道路や高架工事の差し止め請求については,「具体的な健康被害にまでは至らないなど,差し止めを認めるほどの被害を受けているとはいえない」として退けた。
騒々しい街頭で70デシベル,普通の会話で60デシベル,静かな室内で50デシベル,図書館で40デシベル,というところです。
国の環境基準は,昼間70デシベル,夜間65デシベルとのことですが,一時的ならともかく,継続的には辛いですね。
裁判所の認定した,昼間の屋外で65デシベル,夜間の屋内で45デシベルというラインは,継続的な騒音としては,現実的なラインなのかもしません。
また,裁判所は,慰謝料請求権を,便益との比較衡量に基づいて評価しました。
こちらも,現実的な判断です。
この裁判所の示した基準からすれば,実は,相応の交通量がある道路の周辺で,該当するところが多数あるのかもしれません。
今後も,各地で,同様の裁判が提起される可能性があります。