(毎日新聞2010年4月28日より)
衆院本会議で成立した殺人など12罪の公訴時効廃止を柱とする改正刑事訴訟法は,27日の持ち回り閣議で公布が決まり,即日施行された。28日午前0時に時効成立を控える事件を対象にするため,法務省は即日施行という異例の手続きを政府内で働きかけていた。
改正法施行により,95年4月28日以降に発生した殺人などの時効が廃止され,警察の捜査が継続される。傷害致死など人を死亡させたその他の罪は,時効期間が従来の2倍に延長される。■時効廃止対象の12罪
◇刑法
殺人 強盗殺人・強盗致死 強盗強姦致死 汽車転覆等致死
往来危険による汽車転覆等致死 水道毒物等混入致死
◇特別法
決闘による人の殺害 航空機強取等致死
航行中の航空機の墜落等致死 組織的な殺人 人質殺害
船舶強取・運航支配等致死
法律は,バランスが重要です。 見えやすい利益と,見えにくい利益とで,後者にも注目しなければなりません。
時効廃止の,見えやすい利益は,言うまでもありません。
しかし,見えにくい利益(つまり,時効廃止の弊害)には,あまりスポットが当てられません。
とても大変な事態です。
初動捜査段階で犯人を裏付ける証拠が揃えられ,指名手配されているようなケースならまだしも,長年の捜査の積み重ねによって,何十年も後で容疑者が逮捕されるようなケースも,想定されないではありません。
ついに犯人が捕まった,というなら,喜ばしいだけでしょう。
しかし,冤罪の可能性がある場合はどうでしょうか。 何十年も昔のことについて,到底,有効な反論はできません。
何十年もたって逮捕された容疑者に,十分な防御権を保障するための方策。 それが議論された形跡は,見受けられません。
趣旨はともかく,この法改正には,拙速な印象を受けます。