携帯,こたつで異常過熱しやけど メーカーに賠償命令

投稿者: | 2010年4月22日

(日経新聞2010/4/22より)
 こたつの中で携帯電話が異常過熱し,やけどを負ったとして宮城県亘理町の男性(54)が製造物責任法(PL法)に基づき,パナソニックモバイルコミュニケーションズ(横浜市)に約545万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で,仙台高裁は22日,男性の訴えを退けた一審判決を取り消し,同社に約221万円の支払いを命じた。
 小磯武男裁判長は「(携帯電話は)ポケットに収納し,こたつで暖をとることは通常予想され,取扱説明書で禁止したり,危険を警告する表示をしていない。製造物が通常有すべき安全性を欠き,製造上の欠陥があると認められる」とした。
 過熱の原因について小磯裁判長は「事故当時に携帯電話が連続通話状態で45度前後になっていたことや,こたつの熱が外部熱源になり,電池に作用したことなどが考えられる」と指摘した。
 また,男性側の立証責任については「通常の使用にもかかわらず異常が発生したとすれば足り,具体的な欠陥の特定は必要ない」とした。
 2007年7月の仙台地裁判決は「こたつが原因の可能性が高く,携帯電話に設計や製造上の欠陥は認められない」と判断。男性側が控訴していた。
 判決によると,男性は03年5月,自宅でズボンのポケットに同社の携帯電話「P503iS」を入れたまま,約2時間半にわたりこたつで座るなどしていた。その後,左太ももが携帯電話とほぼ同じ形に赤くなっているのに気付き,皮膚科の医師から熱傷2度と診断された。
 パナソニックモバイルコミュニケーションズは携帯電話に欠陥はないなどと主張していた。

 低温やけどの事例です。 触れないほどの高熱でなくても,長時間,熱源に触れた状態が維持されると,皮膚はやけどになります。 高熱の場合は反射的に熱源から離れる行動をとりますが,低温やけどは,気づいたらやけどになっていた,という感じですから,熱源に触れている時間が長くなり,その分,やけどの程度も重くなることがあります。

 記事の事例は,一審と控訴審で判断が異なることになった最大の原因は,原告の立証責任として,どの程度,厳格なものを要求するか,という点です。
 一審は,原告は,原因=欠陥と,それと結果との因果関係について立証することが必要であると判断しました(その立証ができなかったので,原告は敗訴しました)。
 これに対して,控訴審では,原告は,原因=欠陥の立証は必要でないとし,因果関係も緩やかに解しました。 いわば,「それを使っているうちに問題が生じれば,メーカーは製造物責任を負う」旨の判断を示しました。

 メーカーとしては,通常使用に伴うリスクを,考察・検証して,考えられるリスクはすべて告知しておかなればなりませんから,大変です。
 消費者保護を厚くするのが,最近の社会の風潮であり,裁判例の傾向です。