(産経ニュース2010年3月27日より)
実際は元本を失うリスクがあるのに,金利の高さを強調して株価に連動させた債券を販売したのは不当として,会社経営の男性(45)が野村証券に約1億4千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日,大阪地裁であった。稲葉重子裁判長は,この債券を「賭博性の高い商品」と認定。「担当社員の説明が不十分だった」と不法行為を認め,野村証券に約1億1千万円の支払いを命じた。株価や為替レートなどと連動する金融派生商品(デリバディブ)を組み入れた債券は「仕組み債」と呼ばれ,購入した財団法人や学校法人が巨額の損失を出す事例が相次いでいる。
判決によると,野村証券が男性に販売した仕組み債は2種類あり,発行単位はいずれも1億円で,3年間保有すれば年10%強の金利がつく商品。ただし,1億円分購入すれば「指定した株10銘柄に10億円を投資した」とみなされ,株価が1銘柄でも50%(または65%)を下回ると,元本を全額失うリスクがあった。男性は平成18年,会社名義を含めて2億円分を購入。野村証券の担当社員からは,10銘柄がいずれも優良企業で株価が50%(または65%)を割る可能性は低い,と説明を受けた。ところが,一部銘柄が大幅に下落。男性は2年後に精算したものの,戻った額は約5200万円にとどまった。
稲葉裁判長は判決理由で「3年先の10銘柄の株価を予測することはプロの投資家でも困難」と指摘。「野村証券が金利の資金源をどう確保するか明らかでなく,正当性に疑問がある」とも言及し「ハイリスクで賭博性の高い商品と認められる」と認定した。
さらに「非常に複雑な債券で特に誤解を与えない説明が必要なのに,かえって男性側に誤解を生じさせた」として,担当社員の不法行為と野村証券の使用者責任を認めた。
「指定した株10銘柄のうち,1銘柄でも株価が50%(または65%)を下回ると,元本を全額失うリスクがあった」という金融商品について,証券会社の担当者から「10銘柄がいずれも優良企業で株価が50%(または65%)を割る可能性は低い」との説明を受けていた,とあります。
これを賭博というなら,投資はすべて賭博でしょう。
確かに,デリバディブ関連商品は,総じて,リスクが高いのが特徴です。その分,リターンも高い。
金融工学が駆使された仕組み内容について,顧客が完全に理解するまでの説明を求めることは,要するに,プロの投資家以外には販売するな,と言うに等しい。
というか,この裁判官は,実際 そのつもりで,判決を書いたのではないでしょうか。
金融商品の販売には,現在,大幅な規制が為されています。
「貯蓄から投資へ」というスローガンは,日本には根付きませんでした。