【6/30】加ト吉:50億円命令「循環取引認識で拒めず」 東京地裁

投稿者: | 2010年7月21日

(毎日新聞2010年6月30日より)
 冷凍食品大手「加ト吉」(現テーブルマーク,香川県観音寺市)グループの循環取引事件に絡み,取引に関与した鉄鋼・機械商社「岡谷鋼機」(名古屋市)が加ト吉側に売買代金などを求めた訴訟の判決で,東京地裁は30日,ほぼ請求通り約50億円の支払いを命じた。
 松並重雄裁判長は「加ト吉は取引に相当量の循環取引が含まれていることを認識しており,商品の引き渡しがないという理由で支払いを拒むことはできない」と指摘した。

 判決によると,岡谷側は06年12月~07年4月,伝票上,加ト吉傘下の販売会社から冷凍食品を仕入れて加ト吉に転売。同じ商品を販売会社が買い戻し,3社間を一巡させる循環取引を繰り返していた。
 加ト吉側は「商品の売買は実際には行われていない」と主張,「販売会社の社長や岡谷の担当者が詐欺行為を行った」などとも訴えていた。

 A→B→A’ (記事の例で,A=A’が,加ト吉グループです。)
 商品を回す訳です。 現物が動く場合もありますが,多くは,書類のみで 回した形が取られます。
 たとえば,Bは,Aから800万円で仕入れ,それをA’に1000万円で売ります。
 Bとしては,書類を回すだけで200万円の利益が取れます。
 A(=A’)は,200万円の損です。

 なぜ,A(=A’)が,こんな取引をするのか。
 1つは,取引実績です。 売上高を粉飾できます。 あるいは,一担当者が,自分の営業成績を上げるためにやることもあります。
 もう1つは,資金繰りです。 たとえば,BからAへの仕入れ代金の支払が1月後,A’からBへの購入代金の支払が3月後とかいう場合,Aには,一時的に資金的余裕が生じます。

 循環取引は,実は,時々,聞きます。 会社ぐるみのときも,一担当の独断のときもあり,大手でもやっていることがあります。
 2社間の場合は単純なんですが,普通は,そんなに分かりやすい形では行われません (特に,担当者が独断でする場合は,自分の会社も騙すために,複雑な仕組みを作ります)。
 10社近くでグルグルやったり,反対回りも同時にやってたりすると,グチャグチャです。
 物質的な商品がないIT業界なんかでやられると,訳が分からなくなります。
 分かりにくいということは,たとえ損しても,賠償請求はしにくい,ということです。

 循環取引は,典型的な 自転車操業です。
 いつか,破綻します。 A’が,Bに対して購入代金を支払えなくなります。
 書類を回すだけでマージンが入るので,ついつい,誘惑にかられます。
 くれぐれも,手を出したらダメです。