【7/1】入院中の父の資産着服容疑 成年後見人の長男逮捕

投稿者: | 2010年7月24日

(日本経済新聞2010/7/1より)
 入院中の父親(67)の資産約1930万円を着服したとして,横浜地検特別刑事部は30日,父親の成年後見人だった長男の会社役員を業務上横領の疑いで逮捕した。
 逮捕容疑は2007年8月~08年10月,成年後見人として管理していた父親の預金などを個人的使途に充てるために引き出し,着服した疑い。
 特別刑事部によると,同容疑者は07年3月,横浜家裁小田原支部から入院中の父親の成年後見人に選任されたが昨年1月に解任され,同家裁が地検に告発していた。

 刑法には親子や同居親族間の窃盗や横領については刑を免除する「親族相盗」の規定があるが,最高裁は08年2月,後見人は公的性格が強く,刑は免除されないとの判断を示した。特別刑事部によると,これ以降,後見制度を巡る着服について,家裁が告発するケースが増えているという。

 成年後見が始まると,いわば,ご本人(被後見人)の資産が凍結されたに近い状況になります。
 ケース1: たとえば,資産をすべて夫の名義にしている家庭で,夫について後見が始まったら,その資産を,妻は,自由にできなくなります。
 ケース2: 父が長男と一緒に商売をしていて,営業関係の資産がすべて父の名義だった場合,父に後見が始まったら,子は,その資産を自由にできなくなります。

 もちろん,妻や長男が,自ら成年後見人になった上で,本人(資産の所有名義人)のために,合理的な範囲で,資産を使うことはできます。
 でも,たとえばケース1で,妻が,老人ホームに入るために(夫のためにではなく,自分のために),資産を使うことには,制限が加わる可能性があります。
 同様に,ケース2で,長男が,商売を大きくするための投資として資産を使うことには,制限が加わる可能性があります。

 更に,成年後見制度は,遺産分割の前哨戦を防ぐという目的で使われることがあります。
 ケース1で,妻が,子 (典型的には,継母子関係の場合) と対立しているときには,子が,妻の行動を制限する目的で,成年後見の申立てをしてくることがあります。
 ケース2でも,他の子が,長男の行動制限の目的で,申立てます。
 こういった,将来,遺産分割の紛争が想定されるケースでは,裁判所は,第三者後見人 (弁護士や司法書士など) を選択します。 妻や長男は,後見人にさえなれません。

 こういった事態を防ごうと思えば,予め,任意後見契約 (あるいは遺言書もその延長です) 等で,備えておく必要があります。