【6/17】欠陥住宅の損害賠償,居住期間分減額せず 最高裁が初判断

投稿者: | 2010年6月19日

(日本経済新聞2010/6/17より)
 建て替えが必要になった欠陥住宅について,一定期間は問題なく住めていたことを理由に損害賠償額を減らせるかが争われた訴訟の上告審で,最高裁第1小法廷(宮川光治裁判長)は17日,「損害賠償額を減らすことはできない」との初判断を示した。

 一審・名古屋地裁判決は,住宅を購入した原告側がこの家に住んでいた約5年間を「目立った障害もなく居住利益を享受した」と判断。販売した不動産業者ら被告側の「入居以来,近隣の家賃相当額の居住利益を得ていた」との主張を一部認め,居住利益分を差し引いた約3100万円の支払いを命じた。
 これに対し二審・名古屋高裁は「危険な住宅にやむなく住んでいた」として,減額を認めず賠償額を約3900万円と認定。 一,二審で判断が異なっていた。

 同小法廷は「新築住宅に重大な欠陥があり,倒壊の危険などで建物自体に価値がない場合,住んでいたからといって損害賠償額を減らすことはできない」と判断。 二審判決を支持,業者らの上告を棄却した。
 宮川裁判長は補足意見で「住宅の欠陥を巡っては争いになることも多く,その間買い主はやむなく住み続ける。居住していることを利益と考えると,賠償が遅れるほど賠償額が少なくなり,誠意のない売り主を利することになって不公平」と述べた。

 二審判決によると,名古屋市内で女性ら2人が2003年に購入した新築建売住宅について,構造強度上の欠陥が判明。女性らが建て替え費用や引っ越し費用の賠償を求めていた。

 建て替えが必要なほどの欠陥住宅に関する判断です。

 業者側の主張,第1審(地裁) の判断は,こうです。
 すなわち,「たとえ欠陥住宅であっても,現にそこに住んだのである。 居住者は,他に転居して家賃を支払う等していないので,その分,メリットを受けたと言える。」

 居住者の主張,高裁・最高裁の判断は,こうです。
 すなわち,「たとえ住んでいても,欠陥住宅にやむなくのことである。 居住者は,他に転居して家賃を支払うことはなかったが,それは,居住者にその分の損害が発生しなかったというだけであり,居住者がメリットを受けたとは言えない。」

 整理すれば一目瞭然。 さすが,高裁・最高裁です。

 ただし,この判例は,「新築住宅に重大な欠陥があり,倒壊の危険などで建物自体に価値がない場合」という事案を前提にした判断です。
 欠陥住宅全般に敷衍することはできません。