プロバイダーの責任

投稿者: | 2010年4月13日

プロバイダーの賠償責任を否定 最高裁 発信者情報開示は確定
(産経ニュース2010.4.13より)
 インターネット掲示板の書き込みで名誉を傷つけられたと訴えた被害者が,発信者情報の開示を拒んだプロバイダー「KDDI」に損害賠償などを求めた訴訟の上告審判決で,最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は13日,賠償責任を否定する初判断を示した。2審判決中,KDDIに対する15万円の賠償命令を破棄,発信者の氏名や住所を被害者側に開示するよう命じた部分は維持した。
 同小法廷は「賠償責任を負うのは,書き込みによる権利侵害が明らかで,情報開示請求に正当な理由があると認識しているか,これらが明白なのに認識できなかったことに重大な過失があった場合に限られる」と判示。その上で,「書き込みは社会通念上許される限度を超えた侮辱であることが一見して明白ではない」と指摘した。

ネットの中傷,情報開示義務はプロバイダーも対象 最高裁
(日経新聞2010/4/9より)
 インターネットの掲示板で中傷されたとして,静岡市の土木会社がプロバイダー責任法に基づき,NTTドコモに発信者情報の開示を求めた訴訟の上告審判決で,最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は8日,発信者の氏名や住所の開示を命じた二審判決を支持,ドコモ側の上告を棄却した。
 訴訟では,同法の対象が掲示板などを運営し情報内容を提供するような業者だけでなく,相手に接続サービスだけを提供するドコモのような接続業者にも開示請求できるかどうかが争われた。
 同小法廷は「権利侵害が容易で被害が際限なく拡大し,匿名で発信されると被害回復が困難なネットの特徴を踏まえ,加害者の特定を可能にすることが法の趣旨」と述べた。多くの場合,情報発信は接続業者を経由し,発信者情報も接続業者以外は把握していないことを指摘。「接続業者に情報開示を請求できなければ,法の趣旨が失われる」として開示を認めた。

 連続して出た2つの最高裁判例で,プロバイダー(接続業者)に,発信者の氏名・住所の開示義務があることが確認されました。 判断が確定したと言っていいでしょう。

 なお,4/13の最高裁判例の方では,プロバイダーが損害賠償義務を負う場合についても,判断されています。
 記事は不明確ですが,恐らく,「非開示としたことで,情報開示請求者に精神的苦痛を与えた」ものとして,損害賠償請求が為された事案だと思われます。 これにつき,最高裁は,「情報開示請求に正当な理由があると認識し,もしくはそのように認識しなかったことに重過失がある場合」に不法行為が成立する旨の判断を示したものです。
 個人情報保護法以降,情報開示に非協力的な企業等が多くなっています。 そういった企業に対して,損害賠償請求をする場合についても,この最高裁判例の判断は影響してくると思われます。