再婚禁止期間と夫婦別姓(1)

投稿者: | 2015年12月19日

平成27年12月16日、最高裁は、2つの事件で、民法の再婚禁止期間の規定を違憲(長過ぎ)とする判断と、夫婦同姓の制度を合憲(法律マター)とする判断を示しました。
その意味は、再婚禁止期間は「すぐ法律改正しろ」ってことで、夫婦別姓は「もちょっと世論が高まってから、国会で議論すればいい」ってこと。

話題の判決なので、ちょっとコメントします。

再婚禁止期間は親子の話

先日、芸能人の「オレの子じゃない」騒動がありましたね。裁判で、父と子の親子関係が否定されました。
この件のキモは、嫡出推定(ちゃくしゅつすいてい)です。というのも、民法のルールで、

  1. 「離婚から300日内に生まれた子」は、前夫の子と推定される
  2. 「婚姻から200日を過ぎて生まれた子」は、現夫の子と推定される
  3. 父子関係を推定された子を、推定された父が「オレの子じゃない」と言うには、1年内の裁判が必要

なのです。 →772条777条

上のどちらにもあてはまらない「婚姻から200日目までに生まれた子」は、現夫の子との推定が及びません。
その場合、上記3の期間制限はかからず、父親はいつでも「オレの子じゃない」裁判ができます。

件の子は、「婚姻から200日目までに生まれた子」(嫡出推定が及ばない子)でした。
なので、長年親子として暮らしていたのに、「父」から裁判を起こされ、DNA鑑定を踏まえて父子関係が否定されたのです。
 

お気付きでしょうか?
そう。法律上、たとえ血がつながってなくても父子関係は成立します。
そして、子が嫡出「推定」される場合、父子関係は1年で「確定」するのです。
※父子関係を推定された父が、その子の「出生を知って」から1年。

日本経済新聞2014/7/17
DNA鑑定で血縁関係が否定された場合に法律上の父子関係を取り消せるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷は17日、父子関係を取り消すことはできないとする判決を言い渡した。妻が結婚中に妊娠した子は夫の子とする民法の「嫡出推定」規定は、DNA鑑定の結果より優先されるとの初判断を示した。

この理屈は、父が元女性であっても同じ。
血のつながりようのない間柄でも、父子関係は成立・確定します。

最決平成25年12月10日
特例法(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律)3条1項の規定に基づき男性への性別の取扱いの変更の審判を受けた者は、以後、法令の規定の適用について男性とみなされるため、民法の規定に基づき夫として婚姻することができるのみならず、婚姻中にその妻が子を懐胎したときは、同法772条の規定により、当該子は当該夫の子と推定されるというべきである

 

なぜこんな話をしたかというと、今回の違憲判決における最高裁の意図が、

  • 再婚禁止制度は、嫡出推定で混乱が生じないためであるが、
  • そのためには、再婚禁止期間は100日あれば十分

というものだからです。

キモは、嫡出推定です。

離婚した女性が、再婚禁止期間明けにすぐ婚姻(再婚)するケースを前提に、図で説明しましょう。
 

この図は、現行法(再婚禁止期間6ヶ月)を表しています。

  1. 黄色は、「前夫の子と推定される」期間です(離婚後300日)。
  2. 「再婚から200日」に子が生まれたら、現夫の子という推定は及びません。
    ※黄色期間は「前夫の子と推定」、白色期間は「父が推定されない子」。
  3. 水色になれば、「現夫の子と推定される」ようになります。

図のように、黄色(離婚後300日)は、6ヵ月の再婚禁止期間(約180日)を超えて、「再婚から200日」の期間にまたがります(300-180で、最大120日ほど食い込む)。
そして、「再婚から200日」の一部(200-120で80日)は「空白期間」となります。

これに対して次の図が、最高裁の示した「あるべき姿」(再婚禁止期間100日)です。

再婚禁止期間100日と、「再婚から200日」を併せて300日。それがそのまま「前夫の子と推定される」期間となり、「空白期間」が消えて無駄がなくなります。
めでたしめでたし (?)

ポイントは、再婚禁止期間を設けること自体は合憲とされたこと。それは、嫡出推定制度の堅持を意味します。

父子関係を決めるのは、血か、それとも「そして父になる」のか。いろいろあろうけど、ひとつの在り方です。

(長くなったので2回に分けます。)