自転車事故死、賠償4746万円 信号無視の男性に

投稿者: | 2014年1月29日

2014年01月29日 毎日新聞より

 信号無視の自転車に衝突されて死亡した東京都内の女性(当時75歳)の遺族が、自転車に乗っていた会社員の男性(46)に1億636万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は28日、4746万円の支払いを命じた。
裁判長は「男性は脇見をして前方を注視していなかった。青信号で横断歩道を渡っていた被害者に何ら落ち度がない」と述べ、高額の賠償責任を認めた。
・・・(以下略)

損害賠償請求では,(1)損害論,(2)責任論を,分けて考えます。

ある事故が起こったとき,

(1) 被害者に発生した損害は,いくら相当か

(2) その損害につき,どの範囲で,加害者の責任とするか

を,別々・順々に考えるのです。

 

(1)は,被害者の被害状況によって変わります。

加害者が,車だろうと,自転車だろうと,

あるいは,歩行者でも(ランニング中に脇見してぶつかった等),

犬とかであっても(噛みついた等。買主が責任を負う。),

基本的には,変わりません(態様が特別に悲惨といった特殊な場合は,多少の変動あり)。

上の記事のケースで,加害者が,自転車でも,車でも,被害額の計算は同じです。

 

(2)は,事故の状況によって,過失の有無・程度はケースバイケースです。

被害者にも過失があれば,過失相殺されます。

ただし,一般論として,対歩行者の事故において,自転車は,車とほぼ変わらない責任(事故を回避すべき注意義務)を問われるのが通常です。

 

上の記事では,本件以外にも,最近報道された自転車事故の高額賠償事例をいくつか紹介しています。

自転車でも重い責任を問われる,ということが周知されることは良いことです。

しかし本当は,「自転車でも人は殺せる」という危険を,共通認識にしたいところです。

携帯いじりながら自転車に乗っているヤカラを見ると,つい,怒鳴ってやりたくなります。。

 

ちなみに,

被害者は75歳女性ですが,「主婦」の認定を受けたものと思われます(家族等のために家事労働を提供するのが主婦です。独居の方は含まれません)。

「主婦」の場合,一定の収入があるものとみなして賠償額を算定するのが裁判実務です。

これは,性別・年齢にかかわらず(主夫も可),死亡事故のみならず,後遺障害事案,休業損害事案でも,同様の取扱です。

 ただし,主婦性が争点となったり,主婦だとしてもどの程度の収入があったとみなすかで,争われることがあります。

上の記事のケースでは,1億円超の請求に対して,50%以下の認定となっていますが,その原因の1つとして,こういった点が争われたのではないかと思います。