金銭支払い命じる「間接強制」は可能 子供の面会拒否で最高裁初判断
(産経ニュース 2013.4.1より)別居した子供との面会交流を調停や審判で認められたのに、子供を引き取った親が応じない場合、履行を促すために裁判所が金銭の支払いを命じる「間接強制」の決定はできるのか。この点が争われた3件の裁判の抗告審で、最高裁第1小法廷は「取り決めで面会交流の日時や頻度などが具体的に定められ、引き取った親がすべき義務が特定されている場合は、間接強制決定ができる」との初判断を示した。
決定は3月28日付。3件のうち、父が、別居する長女との面会を求めたケースは、
・ 面会は月1回で、第2土曜日の午前10時から午後4時まで
・ 子供の受け渡し場所は、母の自宅以外でその都度協議して定める
・ 母は、子供を引き渡す際を除き、面会交流には立ち会わない
などと取り決めていた。
同小法廷は「母がすべき義務が特定されている」として、間接強制を認めた。残る2件については「頻度や時間は決められているが、子供の引き渡し方法について定められていない」などとして、いずれも間接強制を認めなかった。
(※ 記事は,分かり易くするために一部省略等しています。)
「間接強制」って,聞き慣れない制度ですね。
これ,民事執行法に定められた,強制執行の方法の一種です。
裁判の判決は,「金銭を支払え」というのがオーソドックスですが,時には「特定の行為を取れ」といった命令が下されることもあります。
また,裁判上の和解や,調停において,「特定の行為を取る」ことが約束された場合,その約束には,判決と同じ効果(拘束力)があります。
こういった場合に,もし,「特定の行為を取れ(る)」との命令(約束)が,守らなかった場合はどうなるのか。
たとえば,離婚後に,母親が,「父に子どもを会わせろ(る)」を,実行しなかった場合です。
父親としては,当然,「母親が,裁判所の命令(約束)を守らない」として,裁判所に,「母親に守らせて」と申し立てます。
この場合,国家権力の力で,母親の元から子どもを引きはがして,父親に引き渡すなんてのは,ナンセンスです。
じゃ,どうするかというと,母親に対して,「会わせないなら,代わりにペナルティ金を払え」と命じてもらう訳です。「ペナルティが嫌なら,会わせろ」ということですね。
このように,ペナルティによって相手にプレッシャーをかけ,間接的に,元の命令(約束)が守られるように仕向けることを,「間接強制」といいます。
最高裁は,母に対する,「父に子どもと会わせろ(る)」との命令(約束)について,母が守らなかった場合には「間接強制」の方法が取れることを明らかにしました(もちろん,父母の立場が逆転していても同様です)。
ただし,その条件として,「母のやるべきことが明確に決まっていること」という絞りを入れてます。
「やるべきこと」について,かなり具体的に特定しておかなければならない,ということです。
面会交流に悩まれている方にとって,指標となる判例です。