弁護士と 他士業との 違い

投稿者: | 2012年3月25日

 

最近,交通事故に行政書士が関わって ひどい目にあった方の相談を受けました。
自称専門家が無謀な介入をして,問題をこじらせたり,依頼者の権利を損なったりするケースは,決して珍しくありません。

法律系の国家資格について,違いをご存じない方もいらっしゃると思いますので,それぞれの特徴(というか本来の専門業務分野)について,まず まとめます。

司法書士    登記手続
行政書士    行政手続
弁理士     特許権等の登録手続
社会保険労務士 社会保険手続
税理士     税務申告手続
(公認会計士はちょっと違うので省きます。)

弁護士は,法律問題の専門家として,資格的にはオールマイティーです。
上記の各士業の業務分野は,いずれも,弁護士は取扱いが可能です。
つまり,分野としては,かぶってます。

では,何が一番違うのか。 それは,法律問題の中でも,
弁護士の本来業務は,「紛争」の解決です。 逆に,「諸手続」については,疎いこともあります。
弁護士以外の士業は,基本的に,「諸手続」の専門家です。 各分野の「紛争」は,本来的には専門外です。

どんな資格も,資格を取っただけでは,実務はできません。
経験を積んで,ノウハウを蓄積していく必要があります。
重要なのは,何にノウハウを蓄積していくか,です。

弁護士以外の士業は,限られた例外を除き,裁判を行う権限はありません。
「紛争」は,裁判にならずに解決するのがベストですが,
・裁判する権限を持った上で,その手前での解決を模索するのと,
・裁判の権限が無いから,その手前で解決するしかないのとでは,
「紛争」に取組む姿勢・発想や,解決までの段取りが,全く違います。

裁判なんて,紛争解決の手段に過ぎません。 でも,手段としては究極です。
たとえば,うちの事務所では,交通事故案件は ほとんどが示談で終わります。 それでも,保険会社が折れるのは,いざとなったら裁判できるからなのです。 裁判になったら困る(敗ける)と思うから,その手前での解決を受け入れてくれます。

やはり,「紛争」にノウハウを蓄積しているのは,弁護士なのです。

ネットでは,交通事故の賠償問題を取扱うという行政書士,相続問題を取扱うという司法書士・行政書士,労働紛争を取扱うという社労士などを,見掛けます。 あるいは,交通事故の場合は,保険代理店が動いているケースもあります。
彼らの実際の仕事振りは,分かりません。 もしかしたら,資格以前のもともとの人間性として,紛争解決に向いている人も,いるのかもしれません。
しかし,彼らが,「紛争」にノウハウを蓄積している裏付けは,一切,ないのです。
その上,仮にそれなりの事例を経験しているとしても,それは,「裁判」を除外した 限られた経験・ノウハウでしかないのです。

なのに,なぜ,「紛争」について,弁護士以外の士業に相談・依頼される方が,後を絶たないのか?
安さが魅力って訳でもなさそうです。 実際,弁護士並,あるいはそれ以上の報酬を取っているケースも少なくありません。

恐らく,もっとも大きな要因は,
・彼らが,広告・営業に熱心であることでしょう。
・それと裏腹に,弁護士が,閉鎖的で使いにくいことが問題です。

弁護士は,きちんと仕事をするのは当然として,そのことをきちんと伝える努力も,怠ってはならないと感じています。