★脳脊髄液減少症:体育事故損賠訴訟 女性側が控訴 /大分
(毎日新聞2010年2月13日より)
2003年5月,中学の体育授業中にバレーボールを頭に受け,脳脊髄(せきずい)液減少症になったのは,教諭が注意義務を怠ったためとして,宇佐市の女性(19)と母親(52)が宇佐市に約8250万円の損害賠償を求めた訴訟で,原告側は12日までに,1審の大分地裁中津支部判決を不服として福岡高裁に控訴した。
1審判決は教諭の過失を認め,市に約57万円の支払いを命じたが,事故と減少症との因果関係を否定した。★脳脊髄液減少症の治療に支援を 患者団体が厚労省に要望書
(河北新報社2010年02月23日より)
交通事故などによる強い衝撃で髄液が漏れ続け,慢性的な頭痛やめまいを引き起こす「脳脊髄液減少症」の東北の患者組織が22日,東京・霞が関の厚生労働省を訪れ,患者への支援策や健康保険の適用を求める要望書を提出した。
患者団体「東北脳脊髄液減少症患者の会」の代表ら2人が,厚労省疾病対策課の担当者と面会。「保険適用や,患者が適切な治療を受けられる対策を取ってほしい」と要望した。
厚労省側は「治療を進めている医師らと連絡を取りながら対策を進めたい」と答えた。
患者会は宮城,岩手,山形などの75人で構成。23日には国土交通省を訪れ,減少症を自動車賠償責任保険で認めるように求める。
減少症の治療には,患者自身の血液を注射して髄液漏れを防ぐ治療法「ブラットパッチ」が有効とされている。厚労省の減少症研究班は,治療のガイドライン作成を進めている。
また,症状と交通事故の因果関係を認めるように求める訴訟が全国で相次いでいる。
脳脊髄液減少症は,交通事故等で脳脊髄液が漏れる状態が生じ,めまいや頭痛などの症状が続く疾患です。国内に,10万人以上の患者がいると言われています。
外傷後,長期にわたって症状が続きます。ブラットパッチで症状が軽快することもありますが,なかなか症状改善に至らないケースもあるようです。
最近は,ようやく,疾患として認知されてきたようです。
裁判例でも,後遺症の認定をするケースも出てきました。しかし,的確な診断基準が定まっていないこと等のため,上記の記事のケースのように,否定されるケースもあります(ただし,このケースで,裁判所は,症状は置いて,因果関係を否定する構成としたようです)。
厚労省のガイドラインは,そう遠くないうちに出される見込みと聞いています。
それによって,大きく実務が動いて,被害者救済が実現される可能性があります。