【7/15】子会社買収額は「経営陣の裁量」 アパマン経営側勝訴

投稿者: | 2010年7月29日

(日本経済新聞2010/7/15より)
 賃貸仲介のアパマンショップホールディングス(HD)が 傘下企業を完全子会社化した際,株式の買い取り価格を額面通りの1株5万円としたのは高すぎるとして,株主が経営陣に損害賠償を求めた株主代表訴訟の上告審判決で,最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は15日,株主側の請求を認めた二審・東京高裁判決を破棄した。 経営側の逆転勝訴が確定した。

 同小法廷は「事業再編計画の策定は経営上の専門的判断に委ねられており,総合的に考慮して決定できる。 決定過程や内容に著しく不合理な点がない限り,経営陣は責任を問われない」と,経営陣の幅広い裁量を認めた。
 5万円の価格設定には買い取りを円満に進める狙いがあったことや,経営陣は経営会議で議論し弁護士にも意見を聞いていることなどから「不合理な点は見あたらない」と判断した。
 判決によると,アパマンショップHDは2006年,月決めマンション事業を手がける傘下の「アパマンショップマンスリー」を完全子会社化するため,同社の少数株主から1株当たり5万円,総額1億5800万円で株式を買い取った。 これに対し,マンスリー社の資産状況が悪化していたことなどから,HDの株主が「(マンスリー社の)株式の評価額は8000円余りにとどまる」と訴えていた。

 一審・東京地裁は「経営判断に不合理な点はない」として株主側請求を棄却。 二審・東京高裁は「買収価格の設定には慎重な検討が必要だったのに怠った」として一審判決を変更,株主側勝訴を言い渡していた。

 売買価格は,買い手と売り手の交渉で決まります。 相場があるものであれば参考にはなりますが,売り主は,相場で売る義務がある訳ではありません。
 まして,未公開株式は,不動産と並んで,法廷で争われることの極めて多い,値付けの難しい資産の代表格であり,「相場」自体も 判然としません。 つまり,買い手としては,値切ろうと思っても,交渉材料は脆弱です。

 このため,買い手が,どうしても買いたいならば,売り手を 売る気にさせるだけの好条件を提示する必要があります。
 そうまでして,会社が,どうしても買いたいという時に,それを,一部の株主(ひいては司法) が,「待った」をかけていいのか?
 本件の核心部分です。

 昨今の会社法制では,会社のダイナミックな組織変更,M&Aなどを推進する方向性が顕著です。
 この判例も,この,時代の流れに沿ったものと評価されます。