東京金融取引所，「くりっく365」における証拠金規制への対応について発表
(マイコミジャーナル2010/06/17より)
東京金融取引所は16日，取引所為替証拠金取引「くりっく365」における証拠金規制 (平成22年8月1日施行)への対応について発表した。金融商品取引業等に関する内閣府令の改正により，今年8月1日から，個人顧客を相手方とする外国為替証拠金取引(FX)などについて，店頭取引・取引所取引共通の規制として，想定元本の2% (2011年8月以降4%) 以上の証拠金の預託を受けずに金融商品取引業者等が取引を行うことを禁止する規制 (証拠金規制) が導入される。
東京金融取引所の為替証拠金取引「くりっく365」参加者は，取引所為替証拠金取引に関し，同取引所が定める為替証拠金基準額またはこれに任意に上乗せした額を基準として，顧客から預託を受けるべき証拠金の額を算出している。
同取引所は，証拠金規制への対応として，毎週為替証拠金基準額を見直すなど，新たな為替証拠金基準額の算出方法及び運用ルールなどを定めた。
FX (外国為替証拠金取引) の話題です。
FXで大きく儲けた人の話が，よく宣伝されています。
FXは，もちろん，(それ自体は) 詐欺ではありません。 ただし，ギャンブルに他なりません。
※ FX必勝法といった類は，詐欺です。
FX業者は多数ありますが，いわば，賭場の胴元のような存在です。 基本的には，自分で賭場を開き，そこに集った客に遊興させ，テラ銭 (手数料・スプレッド) を取る。
他方，「くりっく365」はFXの公開市場であり，いわば，公営カジノみたいなところです。 遊興客は，コーディネーター (くりっく365の取扱いのある証券会社・銀行など) を通じて，ギャンブルに参加できます。
FXのテラ銭のレベルは，ギャンブルの中では，かなり安い方です。 ただし，リスクは，他のギャンブルと同等で，基本的にゼロサムです。
FXは，無闇に恐れる必要はありませんが，覚悟なしに手を出すものでもありません。
注意を喚起するため，以下に，FXについて簡単に概説します。
- FXのベースは，為替取引です。
たとえば，「円でドルを買う」取引 (=円安に進むと予想する場合) は，- 1ドル=100円のとき，100ドルを買う (仕入値1万円)。
- その後，1ドル=101円の円安に進んだとき，在庫の100ドルを売却すると，日本円で，100円の利益が出る。
- もちろん，1ドル=99円の円高に進んだときに在庫を売ったら，日本円で，100円の損失が出る。
- FXの特徴は，【証拠金】取引です。
上の例のように「為替レートが，予想の反対 (円高) に”1円” 進んだときに，100円の損失が生じる」こと。 このことを，誰かが，「そんなら，100円分だけチップを買って，為替変動の許容範囲 (円高の程度) を”1円”とする条件で，上がるか下がるか，賭けてもいいんじゃない?」って考えました。
それを実現するのが，FXという，【証拠金】取引というゲームです (FXに限らず，いわゆる信用取引は同じ仕組みです)。 【証拠金】が，カジノ・チップにあたります。上の例に則して言うと，100円だけ拠出してチップを買い，それで100ドル分 (=1万円分) の勝負をする，ということです。
100円の【証拠金】で，1万円分の勝負ができるのだから，レバレッジは100倍。 賭けに勝ったときのリターンも100倍です。
ただし，もし賭けに負けたら，わずか”1円”の円高で，【証拠金】の100円が吹っ飛びます。 リスクだって100倍です。 - FXで，特に注意すべきことは，次の2点です。
- レバレッジの倍率が上がるほどに，為替変動の許容範囲が小さくなります。 その分，【証拠金】の吹っ飛ぶリスクが大きくなります。
- 為替変動があまりに急速・大幅な場合，【証拠金】が吹っ飛ぶだけでは済まない場合があります。 これは，怖い。
普通，FX業者は，【証拠金】を吹っ飛ばすだけの為替変動が生じた場合，速やかに，吹っ飛ばします (つまり，在庫を自動で売って，損切りしてくれます)。 きちんと吹っ飛ばす仕組みが，FX取引における安全弁です。
しかし，あまりに急激な為替変動の場合，吹っ飛ばすのが遅れる場合があるのです。
たとえば，昨年10月，機関投資家による不適切な取引のために南ア・ランドが暴落し，多数のFX投資家が大きな損失を被ったという事件が報道されました (くりっく365にシステム不備がある等の主張で，民事訴訟が提起されています)。
為替は，中長期ではある程度予想できるかもしれませんが，短期の上下動は，まず予測できません。
およそギャンブルにおいては，動物的な勘を感じさせる勝負師もいないではありません。 そういった才覚を持ち，かつ，はりついて取引できる環境にある場合を除き，FXに はまるのは，危険です。