月の土地

投稿者: | 2010年6月13日

1つ前の記事で,月の土地のことを話題にしました。

月の土地は,アメリカのルナ・エンバシー社が「販売」しています。 同社代理店のHPでは,次のようなことが謳ってあります。

  • 創業者が「月は誰のものか?」という疑問を持って法律を調べたところ,世界に宇宙に関する法律は1967年発効の宇宙条約しかないことがわかった。
  • 同条約では,国家の所有を禁止しているだけで,個人所有については言及がない。
  • なので,月の権利を宣言した。

社会常識的に明らかに”シャレ”なんですが,折角なんで,法的観点から分析します。

月の土地を所有することはできません。 売り買いもできません。
その理由を一口で言うと,土地所有権というものは,国家が,その領土を対象に,国内法で設定する権利だからです。

たとえば,土地の私有は,日本では認められますが,共産圏では原則として認められません。 日本でも,私有が認められるのは,日本の領土(国有地等を除いた一部) だけです。
そして,宇宙条約では,国家が月を所有することはできないと定められています。 この関係で,月を自国領土としている国はありません。
つまり,月を,国内法上の所有権の対象としている国は無いのです。

「所有権」を宣言するのは勝手ですが,その宣言(権利) は,どこの国(の法律) からも,保障されません。
まさに,「絵に描いた餅」です。
当然ながら,実体の無い「権利」は,他人に譲渡することもできません。

まあ,宇宙条約の非加盟国もありますので,もし,ルナ・エンバシー社がそういった国と組んで月の領有を主張し始めたら,理屈上は,個人の所有権の対象となる可能性もないではありません。 ただし,そんなことをしたら,米・露・中の連合軍に壊滅させられるでしょう。
つまり,ルナ・エンバシー社から「権利」を買っても,それを,同社の手で守ってもらうことも,期待できません。

と,言うことで,”シャレ”です。
同社は,「権利証」を3000円~で売っています。 これって,ちょっと凝ったギフト・カードくらいの値段です。
だから,一々 目くじらは立てられません。
たとえば,イラク・ディナールとか,各種「幸運を呼び込む…」とか,各種「健康増進のための…」といったものも,低価格の場合は,問題化しません。

1つ前の記事では,”夢を買う”という文脈で,未公開株と,月の土地を同列に論じました。 同じ程度に荒唐無稽な話,という意味合いです。
ただし,未公開株の方は,”シャレ”では済まされない金額の場合がほとんどですが。