【6/3】名古屋市の課税ミス,賠償請求できると最高裁

投稿者: | 2010年6月6日

(読売新聞2010年6月3日より)
 名古屋市から固定資産税などを15年間にわたり過大徴収されたとして,同市北区の倉庫会社が市に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が3日,最高裁第1小法廷であった。
 宮川光治裁判長は「国や自治体の課税ミスで損害を受けた納税者は,課税処分に対する不服申し立てを行っていなくても,損害賠償を請求できる」との初判断を示した。

 その上で,今回のケースについて「同市に過失がなかったとはいえない」と述べ,請求を棄却した2審・名古屋高裁判決を破棄し,審理を同高裁に差し戻した。

 2審判決は「不服申し立てがないのに,過大徴収分の賠償請求を認めることは地方税法の趣旨を逸脱する」と指摘していた。

 課税処分には不服申立ての手続が用意されていて,それには期間制限が設定されている。 期間を途過してしまえば,不服申立ての手続はできない。
 では,不服申立ての手続を経ずに,いきなり,不服の内容を実現するために,裁判所に訴えを提起することができるのか?

 そもそも最高裁は,昭和48年4月26日判決で,「課税処分が法定の処分要件を欠く場合には、まず行政上の不服申立てをし、これが容れられなかったときにはじめて当該処分の取消しを訴求すべきものとされているのであり、このような行政上または司法上の救済手続のいずれにおいても、その不服申立てについては法定期間の遵守が要求され、その所定期間を徒過した後においては、もはや当該処分の内容上の過誤を理由としてその効力を争うことはできないものとされている。…法は、以上のような原則に対して、課税処分についても、行政上の不服申立手続の経由や出訴期間の遵守を要求しないで、当該処分の効力を争うことのできる例外的な場合の存することを否定しているものとは考えられない」としていました。

 本件では,固定資産税等の過大徴収について,不服申立ての手続を経ない提訴を認めたものです。
 実務上,参考になります。