(asahi.com2009年12月27日より)
阪神大震災で全半壊した兵庫県内のマンション172カ所のうち被災当時のまま最後まで残っていた宝塚第3コーポラス(宝塚市)の建て替え工事がほぼ終わった。住民の大半は別の場所に居を構え,戻ってくるのは1世帯だけ。
1995年1月17日の震災で,築約20年の5階建て131戸のマンションは骨組みや外壁にひびが入り,半壊と判定された。住民の意見がまとまらず,再建を進めた管理組合理事長の自宅に嫌がらせの電話がかかる。全戸に悪口を書いた紙がまかれたこともあった。
管理組合は97年11月に建て替えを決議したが,「補修で十分」とする住民が決議無効を求めて提訴した。裁判が7年に及ぶ間,住民は次々とよそに移った。再建されたマンションを購入するには1戸あたり2000万円程度の資金が必要で,戻ろうとする住民はほとんどいなくなった。
このケースは,震災という特別な事情で損壊したものです。ただ,同種の問題は,今後,頻出してくるだろうと言われています。
というのも,マンション建築が本格化したのは高度成長期ですが,そのころ建てられたマンションが,軒並み,老朽化してきているからです。
マンションの建て替え等が難しいのは,それを必要とする時期には,住民たちの多くが,その人生において,子育てを終えたり現役を退いたりして,より安定(無変化)を望む時期に差し掛かっているためです。
また,高度成長期からバブル期にかけてのように,不動産価格が上昇を続けるときには,所有マンションには相応の含み資産があり,建て替えを機にその一部を現実化させること(たとえば,従前よりも戸数の多い建物を建て,一部を新規に分譲する等の方法)によって,建て替えのコストを捻出・軽減するといったことも可能でした。それが,昨今の不況・地価下落の状況では,とても,計算が合わなくなっています。
とはいえ,放置できない場合もあります。 決断するなら,早く,円滑に,が肝要です。