(asahi.com2009年12月19日より)
小学生の頃に同級生らから暴行されたり現金を脅し取られたりする「いじめ」を受けたとして,神戸市の中学3年の男子生徒(15)が元同級生ら3人の保護者に慰謝料など計約390万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が18日,大阪高裁であった。永井ユタカ裁判長は,いじめの事実を一審・神戸地裁判決(6月)と同様に認定したうえで,行為の悪質さを重くみて,賠償額を一審の約53万円から約110万円に増額した。高裁判決によると,生徒は小学5年だった2005~06年,同級生らからボールを顔に強くぶつけられるなどの暴行を受け,スーパーでの万引きも強要された。さらに「万引きをばらされたくなければ金を払え」などと繰り返し要求され,計30万円余りを渡した。判決は,生徒が日常的に暴行され,両親の財布から現金を抜き出してまで金銭要求に応じていたことも踏まえ,賠償額を増やした。
「いじめ」は,不法行為(民法709条)です。民法上,不法行為を行った者は,被害者に対して,損害賠償の責任があります。
ところで,「いじめ」をした加害児童本人に損害賠償の責任が生じるのは当然としても,その親が損害賠償の責任を負うのは,必ずしも当然のことではありません。
人は,自ら行った行為(不作為を含む)についての責任しか負わないのが原則だからです。
では,上のケースで,なぜ,加害児童の親が損害賠償責任を負うことになったのか。
それは,子の「監督義務を怠った」という点において,親自身にも,過失(不法行為)が認められたためです。
事案の詳細は分かりませんが,想像するに,加害児童は金銭を受け取ったりしていますので,生活態度等の変化があったはずです。それを放置していたことなどの点において,「監督義務を怠った」と非難されてもやむを得ないと認められたものと思います。