自殺:交通事故との因果関係認定…福岡地裁が賠償命令

投稿者: | 2010年2月17日

(毎日新聞2010年2月17日より)
 交通事故で重傷を負い,事故から約3年2カ月後に自殺した男性(死亡時21歳)の両親が,相手の乗用車を運転していた男性に約5120万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が16日,福岡地裁であった。南場裕美子裁判官は「事故による障害や自分の将来を悲観しての自殺。他に原因はない」と,慰謝料など約1660万円の支払いを命じた。精神疾患などに罹患(りかん)した医学的診断はなく,判決は生前の言動などから事故との因果関係を認定した。
 判決によると,事故は04年2月,福岡市東区の県道で発生。原付きバイクで直進していた高校3年生(当時)の男性と,反対車線から右折してきた飲酒運転の乗用車が衝突した。男性は事故後に数回の手術を受けたがひざの関節が変形し,歩くのにつえが必要となった。運送会社からの就職内定も辞退し,07年4月に自宅で首つり自殺した。

法律上の「因果関係」は,原因と結果という流れがあるというだけでは足りません。
法律上の「因果関係」は,日常用語としての”因果関係”よりも,原因と結果との間に強固な結びつきが必要です。
自殺という深刻な事態が発生した場合,一般に,事故の他にも,様々な悩み等が影響している可能性があります。
このため,事故以外の原因の影響が大きいと判断される場合には,事故と自殺との間に,法律上の「因果関係」は認められないこともあります。
この記事の裁判では,「他に原因はない」として,法律上の「因果関係」を認めました。原告側が,「因果関係」の立証に成功した事例です。
被害者が若い青年であったこと,就職の内定もあったこと等からすれば,事故の影響が,死を選択しなければならない状況をもたらしていたと言えるかどうかは,一見すると,疑問の余地がないではありません。
このような場合,裁判所に理解してもらうには,詳細・綿密な立証を行うことが重要です。