(毎日新聞2011年2月10日より)
日本弁護士連合会は9日,臨時総会を開き,報酬の上限などを定めた「債務整理事件処理の規律を定める規程」案を可決した。違反行為があった場合,懲戒処分の対象となる。
日弁連が弁護士の個別業務を規制するのは異例だ。債務整理事件では,弁護士が貸金業者と交渉して過払い金を取り戻したり,法定外利息分を差し引いて元金を減額させたりすることで成功報酬を得ている。弁護士報酬は04年4月に自由化されたが,債務整理に関する報酬を巡っては苦情が多く寄せられ,日弁連が規制策を検討していた。
規程では,債務整理に成功した場合の解決報酬金を業者1社当たり上限5万円とし,実際の金額は施行規則で原則2万円以下にするという。また,業者に元金を減額させた場合は減額分の10%以下,裁判で過払い金を取り戻した場合は過払い額の25%以下とした。
弁護士が自分で依頼者と面談して債務整理の処理方針を確認することも原則として義務付け,債務者に誤解を与えるような広告も禁じた。 規程は4月から施行される。債務整理を巡っては,一部で「弁護士が債務者を食い物にしている」との厳しい批判があり,日弁連内には「弁護士全体の信頼が失われかねない」との危機感があった。
宮城県内の債務者は,東京の弁護士に債務整理を依頼したところ,弁護士は過払い分と減額分の合計額の36・75%の報酬を請求。債務者は過払い金が一切戻らないばかりか,報酬の不足分も払わなければならなくなった。
香川県内の債務者は,テレビCMを見て東京の弁護士事務所に債務整理を依頼。送られてきた相談手順には弁護士が面談すると明記されていたが,実際には事務職員が終始電話で対応し,報告もないまま訴訟や和解で解決された。東京のある弁護士は,「規制すれば報酬額が上限に張り付いてしまい,消費者の利益にはならない」と指摘。 面談義務化についても「電話やメールでの相談を希望する人もいる。お客様のニーズに合わせたサービスを提供すべきだ」と話している。
異例中の異例です。
以前,弁護士会には「報酬基準」の規程があり,独禁法違反との指摘を受けて撤廃されました。 ただ,その「報酬基準」でさえ,強制力はありませんでした。
今回,過払い事件について,強制力をもった規制が加えられます。 よほど,ひどかったのでしょう。 日弁連の危機感が分かります。
過払い金の回収は,本来,「債務整理」(任意整理ともいいます。)の一環として,行われます。 これは,多重債務状態で返済できなくなった方,でも,破産はしたくない(できない)方のために,弁護士が間に入って各業者と交渉し,交通整理をして,3~5年程度の返済計画で返していけるようにする,という業務です。 その過程で,利息の払い過ぎが判明したときに,それを回収し,他の負債への返済に回す,といったことが行われてきました。
このうち,払い過ぎた利息(=過払い金)の取り戻しができるという1点のみに着目して,ビジネス化した弁護士・司法書士たちがいて,マスコミなどでも,この点のみを取り上げることが多くありました。
弁護士の費用は,通常,受任時の「着手金」と,解決時の「報酬金」の,二段階制です。
債務整理の着手金は,
業者1件あたりいくら,という形が多いです。 3~5万円くらいが多いと思います。
ただし,過払い金の回収を行う場合に,交渉での解決(回収額は一定の減額となる)を潔しとせず,裁判(できるだけ満額に近い回収を図る)を提起する場合には,着手金の追加が必要となるのが通常です。 これは,普通の裁判と同様に着手金を請求する人と,特別の着手金を定めている人が,います。 特別の着手金については,通常より安いなら問題ありませんが,通常より高額に設定している人がいると聞いています。
債務整理の報酬金は,
「減額」にとどまった場合には,まったく取らない人,定額で取る人,「減額」額に対して一定割合の報酬金を取る人が,います。
「過払い金」を回収できた場合は,それに対して一定割合の報酬金が必要となるのが通常です。 この割合は,2~3割が多いようですが,様々です。
私のイメージでは,債務整理・過払い金の事件は,他の一般的な業務に比べ,低額の費用で受任するものだと思っていました。 それは,1つには消費者保護という側面があること,もう1つは,解決までに時間を要しないからです。
私のところでは,着手金は,1件3万円(ただし,3件以上の場合),裁判する場合の追加着手金は5万円のみ(請求金額に関わらず)です。 報酬金は,減額報酬は頂かず,回収した場合のみ2割の報酬としています。
債務整理・過払い金の事件は,依頼者は,安いコストで,経済的利益を獲得でき,とてもメリットが大きいというのが,本来の姿です。
高額費用を請求する人は,恐らく,次のように言うのでしょう。
「借金が大幅に減るんだから,高額の費用を取っても問題はないのだ」と。 でも,この発想は,基本的に,依頼者をバカにしています。
面談を断って電話のみで済ますとか,弁護士は出ずに事務員にすべて任せるといったやり方も,相談者・依頼者を軽く扱っている点で,ダメでしょう。 そもそも,弁護士が楽するやり方をするところが,他より費用が安い訳ではない。 「お客様のニーズ」とかいうのは,ゴマかしです。