(読売新聞2011年2月12日より)
福岡県粕屋町で9日夜,町道の路側帯を歩いていた男子高校生2人が飲酒運転の車にはねられて死亡した事故で,道交法違反(酒気帯び運転)容疑などで県警に逮捕された建設作業員(35)が,「酒を飲んで運転しても大丈夫と思った」と供述していることがわかった。
捜査関係者によると,容疑者は,事故直前の9日午後11時頃まで居酒屋でビールと日本酒を飲んでいたことを認め,「気をつけて運転すれば事故を起こさず,警察にも捕まらないと思った」と供述しているという。
西日本新聞2011年2月10日朝刊の社説「飲酒事故最多 悲劇が起きた福岡でなぜ」にありましたが,福岡県内で2010年中に発生した飲酒運転事故が337件で,全国の都道府県で最多となったそうです。
福岡市東区で幼児3人が犠牲になった悲惨な飲酒死亡事故が2006年8月。それ以来,取り締まりも厳しくなり,改正道路交通法(2007年9月施行)で厳罰化も果たされたのに…。
飲酒運転をしてしまうと,警察に捕まり,大きなペナルティーを受けるリスクがあります。もし,事故を起こそうものなら,社会的非難を浴び,社会的立場を失い,家族が離れ,刑事罰を受ける可能性もある。 合理的な思考力があれば,とても,できないはずです。
しかし,行動経済学では,人間は,リスクに対する感受性が低いことが分かっています。 つまり,人間という動物は,「自分だけは大丈夫」という,全く根拠のない思い込みをする生き物なのです。 その上,飲酒による酩酊で,判断力は更に鈍ります。
恐らく,刑罰等の警告効果 (人の意思決定に間接的に作用する方法) だけでは,限界があるのでしょう。
現に,国選事件をやっていると分かりますが,飲酒運転を繰り返している人は,結構,います。
今年4月から,国土交通省の「事業用自動車総合安全プラン2009」に基づく省令改正により,点呼時のアルコール検知器使用が義務付けられます。 ただし,これは,事業者に対して課される義務であり,事業用自動車のみが対象です。 義務の内容も,怠った場合のペナルティーも,大したものではない。
無いよりはマシですが,とても,抜本的な対策とは言えません。
たとえば,アルコールを検知すると車が動かなくなる装置のようなものを,広く一般に,義務付けるべきでしょう。
事故にあった当人たちの無念,ご家族らの心痛は,いかばかりかとお察しします。
ご冥福をお祈りします。