(毎日新聞2010年6月18日より)
グレーゾーン金利分の支払い済み利息を「過払い金」として返還するよう貸金業者側に命じる判決が全国で相次いでいることについて,神戸地裁社支部の山本善平裁判官が今年3月,担当した返還請求訴訟の判決で,「司法ファッショと批判されかねない」などと指摘していたことが分かった。原告は兵庫県の女性。昨年9月,東京の大手消費者金融会社に利息制限法の上限(年15~20%)と出資法の上限(同29・2%)の間のグレーゾーン金利分約240万円の返還と,その利息5%の支払いを求めて提訴した。
山本裁判官は判決で,約118万円の返還を命じた一方,貸金業法の「みなし弁済規定」が条件次第でグレーゾーン金利を認めていたことなどから,「被告は悪意の受益者ではない」として5%の利息請求は退けた。
女性は大阪高裁に控訴し,今月和解が成立した。また,山本裁判官は「06年1月の最高裁判決で(みなし弁済規定の)適用が急に厳格になった」と指摘。その上で「下級審全体が(最高裁判決に)いささか過剰に反応している」「司法が要件を厳格に設定して(規定を)事実上葬り去るのは,よくよく考えれば異常な事態」などとした。
みなし弁済規定は,一定の書面が交わされ,債務者も納得したグレーゾーン金利を認めていたが,18日の改正貸金業法の完全施行で規定は廃止された。
1つ前の記事でも話題にしましたが,貸金業法の解釈に関して最高裁の示した判断が,他に類を見ないほど峻厳なものであることは,間違いありません。
これは,多重債務問題が,社会問題・人権問題にも化している状況をみかねて,最高裁が,国(立法・行政) に対し,対策を命じたものだと理解されます。
裁判所が,「三権分立」の機能を果たしたものです。
従来,裁判所は,判決で立法・行政に物申すことには消極的でした。
国の政策は,民主的プロセスで策定され,民主的プロセスで修正されるのが原則であって,裁判所としては,あんまりひどい事案について個別救済していく程度にとどめるべきだ,といった考え方です。
これを,「司法消極主義」といいます。
しかし,民主的プロセスは,多数決を基本とし,多数派工作に成功したグループの意見が通りやすいということが,原理であり,限界です。
民主的プロセスによる誤謬について,裁判所が,理性に基づいて「待った」をかけることは,安全弁として必要・有益です。
最近の裁判所は,国の政策の誤りについて,より積極的に,非難するようになってきました。
「司法積極主義」への潮流が顕著です。
とはいえ,
裁判官も人間ですから,色んな人がいます。 考え方も様々です。
この記事の裁判官の,考え方 自体については,とやかく言うことではないと思います。
ただ,本当に,記事のとおりの用語を使ったのであれば,さすがに不適切でしょう。
果たして,表現者としての覚悟をもって判決したものかどうか,甚だ疑わしいと言わざるを得ません。