【6/18】貸金業者:国を提訴 違法な規則や指導で損害被った

投稿者: | 2010年6月25日

(毎日新聞2010年6月18日より)
 グレーゾーン金利を容認していた国の違法な規則や指導に従ったために,借り手から過払い金請求を受けて多額の損害を被ったとして,盛岡市の貸金業者「ユニワード」(09年廃業)が,国に約2億7200万円の国家賠償を求めて提訴した。 東京地裁(甲斐哲彦裁判長)で18日にあった第1回口頭弁論で国側は争う姿勢を示した。

 貸金業法の規則(83年制定)はグレーゾーン金利を一定条件のもとで容認していた。だが,最高裁が06年に実質的に違法とする判断を示したのを契機に,過払い金返還請求が急増した。
 ユニワード社は,そうした経緯をふまえ「規則制定や23年間改正しなかった違法行為によって損害を受けた」などと主張,08年度,09年度の返還額の支払いを求めている。

 このBlogでは,原則として,提訴段階の事案についての記事を紹介することはしないようにしています。 ただ,とても興味深い事案なので,特別に,取り上げます。

 多重債務問題の本質は,不良債権に苦しむ銀行の救済にあったと思われます。
 消費者金融は,銀行から低利で資金調達し,それを高利で回して,ボロ儲けしていました。 当然,銀行にとっては極めて優良な貸出先でした。
 国が,多重債務問題への対策を講じないで来たことは,恐らく,意図的でしょう。

 平成18年(2006年)になって,ようやく,最高裁がそれに「No」を突きつけました。
 もちろん,そのころには銀行は立ち直ってきており(リーマン前です),政策変更が許容されるような社会的素地があったことも考慮されたはずです。
 平成18年判例は,時代の流れの中で,必然であったと思います。

 裁判所の判例によって,それまでに確立していた実務が一挙に覆されると,とてつもない混乱が生じます。
 グレーゾーン問題だけではありません。 たとえば,賃貸借契約における敷金返還(退去時原状回復)の問題も,似たような構図です。

 もっとも,司法と,立法・行政との間の,このような時間的なズレは,国の制度の根幹を成す「三権分立」において,そもそも織り込み済みであるとも言えます。
 ズレの問題は,訴訟の迅速化の取り組みを進めることによって,多少なりとも弊害を減らしていくしかないのだろうと思います。