【6/12】教員免許取り上げ違法

投稿者: | 2010年6月13日

(読売新聞2010年6月12日より)
東京高裁判決「県は裁量権逸脱」
 十分な反論の機会を与えずに教員免許の取り上げ処分を行ったのは違法として,元私立高校教諭の男性が県に処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審が10日,東京高裁であり,大橋寛明裁判長は請求を棄却した1審・さいたま地裁判決を取り消し,男性に対する処分を取り消した。
 判決によると,男性は同校の非常勤講師だった2008年2月,女子生徒を盗撮したことを理由に退職。 県教委の調査に対し,男性は「自主退職で,免許取り上げ処分の対象にはならない」と訴えたが,学校側は「事実上の解雇で,処分対象」と主張した。男性は再度の事情聴取を求めたが,県教委は同年11月,免許を取り上げた。
 判決は「通常の処分より手厚い手続きを保障すべきで,県教委が男性に反論の機会を与えなかったのは裁量権の逸脱にあたり違法」と指摘した。

 教育職員免許法では,私立学校の教員が懲戒免職に相当する理由で解雇されたと認められるとき,免許を管理する県教委は,免許を取り上げなければならないと規定している。
 県教育局教職員課は「男性は『自主退職』を主張したが,学校側に確認したところ,『懲戒解雇の規定はないが,事実上の解雇』と当初からの説明通りだったので,再び聴取は行わなかった。判決の内容を検討して,今後の対応を決めたい」としている。

 デュープロセス,という考え方があります。 適正手続の保障,という法理です。
 主として刑事事件において論じられますが,行政事件など,公権力の行使についての紛争にも,敷衍されます。
 これは,国家による権利侵害を防ぐためには,まず手続を監視しなければならない,という考え方によっています。

 適正手続の具体的内容は,「告知と聴聞」です。
 要するに,予め処分を通知し,弁解の機会を与えなければならない,ということ。
 問答無用はダメ,ということ。

 本件で,裁判所は,教員免許取上げという極めて重大な処分なんだから,相応に,慎重な手続を行う必要がある,と判断しました。
 これは決して,原告の不始末(盗撮)に対して教員免許を取上げるのは不適切だと言っているものではありません。 処分するにしても,適正な手続を踏め,と言っているものです。