建設中マンション「建築確認無効」,取り壊しも

投稿者: | 2009年12月17日

(読売新聞2009年12月17日より)
 東京都新宿区で建設中の3階建てマンションを巡り,周辺住民が「安全性に問題がある」として,区に建築確認の取り消しを求めた訴訟の上告審判決が17日,最高裁第1小法廷であった。
 宮川光治裁判長は「マンションの建築確認は違法だ」として,建築確認を取り消した2審・東京高裁判決を支持し,原告勝訴の判決を言い渡した。マンションは本体工事を終えるなど7割方完成しているが,建築確認が取り消されたため,建物を取り壊すなどの措置を取る必要が出てきた。
 問題となったのは,地上3階地下1階建てのマンション(約30戸,延べ床面積約2820平方メートル)。周囲ががけなどに囲まれ,西側に長さ約34メートル,最小幅約4メートルの通路だけで外部の道とつながっている。
 判決によると,都建築安全条例では,延べ床面積が2000平方メートルを超える建築物は幅8メートルの通路が必要だが,区長が安全だと認める場合には例外とする規定がある。新宿区はこの例外規定を適用した上で,2006年7月に建築確認をした。
 1審・東京地裁は08年4月,「提訴できる期間を過ぎている」として訴えを退けたが,同高裁は今年1月,「マンションの敷地は周囲ががけになっており,通路以外で避難できない。災害時の避難に支障がないとする区長の判断は合理性を欠き違法」と請求を認めた。

 行政は,普通,硬直した対応を取るものですが,この事案では,融通を効かせて,柔軟な対応をとったようですね。それ自体は,歓迎されるべきことかもしれませんが,本件ではあだになりました。

 このマンションの安全性は,マンションの入居者の問題であって,本来,周辺住民には直接の関係はありません。でも,周辺住民らが,この種の反対運動をする上では,とにかく細かく細かく論点を積み上げていくというのは,有効な戦略である場合が多いです。現に本件では,それが結果につながっています。

 しかし,ほぼ完成の建物を取り壊すなんて,社会資源の無駄もいいとこです。
 途中どっかで軌道修正できなかったのかなあ,と思いますが,軌道修正は,行政のもっとも苦手とするところですから,仕方ないのかもしれません。