(東京新聞2010年4月8日より)
町田市山崎町で,老朽化した低層十棟の分譲団地(300戸)が,開発会社など外部の専門業者の手を借りずに住民で構成する「建て替え組合」の自主建て替えによって真新しいマンション(十階建て二棟,300五5)に生まれ変わった。
建物は昨年9月完成。新居での暮らしも落ち着いたことから3月末,住民らが完成式を開いて建て替えを祝った。建て替えられたのは1968年に完成した「町田山崎住宅第一街区」。鉄筋コンクリート5階建ての9棟と平屋の1棟から成る団地だったが,大規模補修を実施しておらず,ガス設備や建物本体が危険な状態に。3DK(約48平方メートル)の間取りが手狭な上,エレベーターもないことなどから,89年に建て替え話が持ち上がった。
2006年に団地の一括建て替え決議が成立。同年12月,建て替え組合を設立した。マンション建て替え円滑化法では,組合で建て替え事業に取り組む場合も開発事業者を「参加組合員」として事業に参加させることができる。しかし事業の採算性などを理由に事業者がつかず,仮につけても自己負担分の増額が予想されたことなどから,住民らは自力での建て替えを決意。
事業資金の調達など煩雑な課題を一つ一つ乗り越えた。建て替え時の仮住居は,都市再生機構の賃貸住宅を近隣に確保。反対者への売り渡し請求も自分たちで行った。
幸い,十棟が建つ敷地面積は約2万9000平方メートルでゆとりがあり,高層二棟に集約して建て替えることで余分になる土地を売却し,建て替え費用などに充てることができた。組合では,元の敷地の約30%を都市計画道路用地,公園用地として市に,戸建て住宅用地として民間分譲会社にそれぞれ売却。こうした手続きも建て替え組合で処理した。
市からの補助金,修繕積立金,土地売却益などを生かし,建て替えに伴う一戸当たりの自己負担額は平均約900万円に抑えることができたという。
マンション建て替え問題は,今後10年ほどの間に,本格的に,社会問題化してくると思われます。
記事の事例では,(1)容積率に大幅な余裕があったこと,(2)一戸あたり約900万円の負担ができたこと,(3)住民の団結,が成功のポイントです。
ただし,かかるアドバンテージがありながらも,採算性の問題から開発事業者がつかなかったようです。
成功例を知ると,建て替え問題の難しさが,余計に,あぶり出されます。