(読売新聞2010年6月16日)
プロ野球選手ら29人が,ソフトバンクと楽天を除く10球団を相手取り,野球ゲームソフトや野球カードに使われる選手名や肖像について,第三者に使用を許諾する権限が球団側にないことの確認を求めた訴訟の上告審で,最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は,選手側の上告を退ける決定をした。
決定は15日付。球団は,選手の氏名,肖像の使用を商業的に許諾する権利を独占的に持つとした1,2審判決が確定した。選手と球団の契約は,野球協約に基づき内容が統一されており,肖像権については,「すべてが球団に属し,球団は宣伝目的のためにいかなる方法でも利用できる」と規定している。
訴訟では,肖像を商業利用する場合も「宣伝目的」に含まれるかが争点となったが,1審・東京地裁は「球団やプロ野球の知名度の向上に役立つ限り,宣伝目的に含まれる」と判断。2審・知財高裁も「氏名や肖像についての人格的権利の使用で対価を得る権利(パブリシティー権)を球団に持たせることは可能」とし,球団の使用許諾権を認めた。
大きな話題ではありますが,基本的には球団と選手との契約の中身についての解釈論であって,法律論としては,大きな問題を含むものではありません。
要するに,球団と選手との間の契約で,肖像権について「すべてが球団に属し,球団は宣伝目的のためにいかなる方法でも利用できる」と規定されているところ,肖像を商業利用する場合も,「宣伝目的(の利用)」と言えるものかどうか。 それが,争われました。
裁判所は,1審・2審とも,商業利用も契約書上の「宣伝目的(の利用)」と言える,と判断しました。
その判断が確定した訳です。
なお,最高裁の「上告を退ける決定」というのは,第2審の判決が出た後に,敗訴した選手側が,最高裁に不服申立ての手続(上告)をとったものの,最高裁が受け付けなかった,という意味です。
民事訴訟法上,上告は,まず,受け付けられるかどうかで絞りがかかります。 受け付けてもらうこと自体,狭き門なのです。