【7/22】政教分離訴訟:神社行事の市長祝辞は合憲 最高裁逆転判決

投稿者: | 2010年7月29日

(毎日新聞2010年7月22日より)
 石川県白山市の角光雄市長が地元神社の関連行事で祝辞を述べたのは,政教分離の原則を定めた憲法に違反するとして,住民の男性が行事出席に伴って支出された公費1万5800円の返還を求めた訴訟で,最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は22日,違憲とした2審判決を破棄し,男性の請求を棄却した。
 判決は「祝辞は宗教的色彩を帯びない儀礼的行為の範囲にとどまる」と合憲判断を示した。 市側の勝訴が確定した。

 小法廷は「宗教とのかかわり合いを持つことは否定できないが,市長は地元の観光に尽力すべき立場にある」と指摘。 政教分離訴訟の最高裁判例(1977年)に沿い「祝辞は社会的儀礼を尽くす目的で行われ,特定宗教への援助になる効果もない」と合憲判断した。

 政教分離原則は,行政が,宗教を「応援」することを禁じるものであり,「避ける」までの必要はない,というのが裁判所の基本的な考え方です。
 判示の「祝辞は社会的儀礼を尽くす目的で行われ,特定宗教への援助になる効果もない」という部分は,講学上で「目的効果基準」と呼ばれ,「応援」にあたるかどうかの判断基準として,確立しています。

 ただ,目的とか効果とかいうのは抽象的な言葉ですから,具体的に,どこまで許容されるのかは,結局のところ ケースバイケースです。
 本件では,高裁が違憲判断をしており,ギリギリの限界事例だったと思われます。

 通常に弁護士業務をしていて,このような裁判にかかわることは まずありませんが,一種の行政事件として見れば,最高裁の考え方の傾向として,実務上,参考になります。